新しいお客さまとのご縁、大切にしたいですよね。 一度きりで終わらせず、長くお付き合いするためにはどうしたらいいか。 これは、多くの企業が日々頭を悩ませながら工夫を凝らしている課題です。

縁があった顧客と「いい関係を築きたい」というのはごく自然な感情。 また、もう少し即物的な視点で見ると、新規の顧客がもたらす利益とリピーターがもたらす利益では、数倍から十数倍もの差が出るというデータもあります。

もちろん新規開拓も重要ですが、それ以上に注力したいのが「買ったその後の関係づくり」。 これは感覚ではなく、数字が証明しています。

本記事では、お客さまとの“その後の関係”をどう育てていくか、 つまりLTV(顧客生涯価値)を高めるための設計についてお伝えします。

通知の送り方やメディアの選び方、売り込み感を抑えたコンテンツの工夫、さらにはファンが集まる“居場所づくり”まで。 中小企業や小売店の現場でも無理なく取り入れられる施策を、ここから一緒に考えていきましょう。

1. 「買ってくれた後」に、また選ばれるお店になるには?

初めてのお店で買い物をした時、次回使えるポイントやサンクスクーポンが届いたことはありませんか? そして、「せっかくクーポンをもらったから、使わないともったいないな」と購入を検討したことも、あるのではないでしょうか。

最近では、特にアパレルやコスメなどの分野でこうしたアプローチが一般的になりつつあります。 購入直後に「次回のお買い物に使える◯%オフクーポン」が届くことで、お客さまの購買意欲をくすぐる。企業側もそれを見越して、しっかり設計しています。 こうした“次の一手”は、決して悪いことではありません。 ただ、それが「売り込みをかけられている」と感じさせるような押しつけになってしまうと、お客さまの心はすっと離れてしまうこともあります。

自然なフォローで「また会いたい」につなげる

「このブランドと付き合っていこう」と思ってもらうためには、自然なかたちで関係を築くことが大切です。 たとえば、購入後のお礼メッセージ。商品を長く使っていただくための使い方ガイドや豆知識なども、関係を育てるきっかけになります。

お店との関係が一度で終わるか、「また買いたい」「また会いたい」と思ってもらえるか。 その違いは、実はこうした“小さな接点”の積み重ねにあるのではないでしょうか。

今すぐ大がかりな仕組みを整える必要はありません。 まずは一通のメッセージ、一つのきっかけから。 無理のないペースで、“また選ばれる関係”を築いていきましょう。

2. LINE・メルマガ・SNS…どれをどう使えばいい?

かつて、お客さまとつながる手段は、ダイレクトメールや電話が主流でした。現在は、LINEやメルマガ、SNSなど、多種多様なチャンネルが選べる時代です。とはいえ、すべてを使いこなす必要はありません。大切なのは、そのブランドに適した手法を見極め、適切に使うことです。

たとえばLINE。国内での利用率が非常に高く、クーポン配信などの導線としてとても便利です。薬局やアパレルのように「LINE登録で割引クーポン配布」といった導線は、実際によく使われている入り口です。その後に公式アプリへ誘導して、より自由度の高い情報配信につなげる、という流れも効果的でしょう。ただし、通知が多すぎると「うっとうしい」と思われ、ブロックされてしまうリスクもあります。

一方で、メルマガは読み物に向いていて、文章でしっかり伝えたいときに適しています。たとえば、隔週のニュースレターで、二十四節気に関連した話題とともに、季節のおすすめ商品やスタッフのメッセージを届けるといった具合に。

そして、SNSは「共感」や「発見」を促す場。リール動画やお客さまの声をシェアすることで、新しい出会いをつくることができます。

さらに、クローズドSNSのような“限定された空間”では、単なる情報配信を超えて「集まる場所」として機能させることが可能になります。

また、昔ながらの「お手紙」が効果的な場合もあります。 どの手段が合うかは、ブランドや商材、そして顧客のペルソナによって異なります。 まずは、自社に合った方法を見極めていくことが大切です。

3. 売り込み感ゼロ!読み応えのあるコンテンツを届ける

どんなツールを使っていても、それを活かすのは「中身」です。 伝えたいことが“いかにも売りたい”一色だと、お客さまの心には届きにくくなります。

だからこそ意識したいのが、「読んで楽しい」「ためになる」と感じられるような読み応えのあるコンテンツ。 たとえば、中川政七商店のように、商品の背景を「暮らし」の文脈と組み合わせて紹介する方法は、多くの共感を得ています。

また、「生産者を訪ねる」「職人に学ぶ」「○○を育んだ風土をたどる」などの企画も、知的好奇心をくすぐりながら、ブランドの価値観や世界観を自然に伝えることができます。

読み手が「このブランドって、ちゃんとしてるな」「面白い視点を持ってるな」と思えるような設計こそ、ファンを増やす鍵になるのではないでしょうか。

4. 通知疲れを防ぐ!心地よい距離感のつくり方

お客さまとのつながりを大切にしたいと思うあまり、つい通知を頻繁に送りすぎてしまう……。そんな経験はありませんか?

LINEやメルマガなどは便利な手段ですが、その速報性ゆえに、使い方を間違えると「うっとうしい」と思われてしまい、ブロックされるリスクもあります。

そこで大切なのが、“ちょうどいい距離感”の設計です。

たとえば、「毎月1回、暮らしに役立つ情報をお届けします」とあらかじめ配信のペースや内容を伝えておけば、安心感を持って受け取ってもらいやすくなります。

また、「好きなタイミングで見に行ける」仕組みを用意しておくのも有効です。

たとえばLINEは手軽に使える一方で、通知が頻繁に届くことや、未読バッジがたまることをストレスに感じる方も多くいます。

一方、公式アプリであれば、お知らせやクーポンをカテゴリごとに整理できたり、通知の受け取り方に柔軟性を持たせたりすることが可能です。

たとえばドラッグストアのように、複数のクーポンをこまめに届けたい業種であれば、LINEよりもアプリの方が適しているケースもあるでしょう。

一方的な発信ではなく、「自分のペースで関われる相手」という印象を持ってもらうこと。 それが、長く続くファンとの関係づくりの第一歩になるのではないでしょうか。

5. 顧客の声を活かすことで、関係はもっと深まる

お客さまから意見が寄せられた時こそ、関係を深めるチャンスです。

せっかく届いたお客さまの声は、活かしてこそ意味があります。 たとえば、「◯◯という声を多くいただいたので、改善しました」と発信するだけで、「ちゃんと見てくれている」という安心感や、参加している感覚が生まれます。

これは、単なる“満足度の向上”にとどまりません。 ブランドに対して「私も関わっている」という気持ちを持ったお客さまは、次第に“応援者”のような存在へと育っていきます。

一方的な発信ではなく、双方向のやりとりを意識してみてください。 アンケートやコメント、レビューにしっかり耳を傾け、それを実際のサービスや商品の改善に活かす——その姿勢が、ファンとの信頼関係をぐっと深めてくれるはずです。

6. 自然なアップセルを実現する導線設計

売上アップのためにアップセルを検討する場面もあるでしょう。 ただし、「これも買いませんか?」といった押し売り感のある提案は、警戒されてしまいがちです。

そこで有効なのが、“生活提案型”のアプローチです。

たとえば、「このアイテムとセットで使うと、もっと快適になりますよ」や、「このアイテムと組み合わせると、コーディネートの幅が広がります」といった文脈のある提案。

こうした自然な流れでの案内であれば、押しつけではなく、親切な提案として受け取られやすくなります。

ゴールは「次の商品を買ってもらうこと」ではなく、「今使っている商品を、もっと気に入ってもらうこと」。 この視点を忘れずに、提案のタイミングや伝え方を設計していきましょう。

7. ファンが集まり、つながり続ける“場”を設計する

一方的に情報を届けるだけでは、長くつながる関係は築けません。 ファンが「ここにいたい」「また見に来たい」と思えるような“場”を用意することが、次のステップです。

たとえば、クローズドSNSや、会員限定のInstagramアカウント。あるいは、定期的なリアルイベントやオンライン座談会などもいいでしょう。

その中に雑談スペースを設けたり、スタッフが時折顔を出したりすると、ブランドとの距離がぐっと縮まります。

「情報を届ける場所」から、「関係が育つ場所」へ。 ファンが安心して集まれる居場所をつくることが、LTV最大化の鍵になるのではないでしょうか。

まとめ:関係を“続けたくなるもの”にする仕組みを

顧客生涯価値(LTV)を高めるには、リピート購入を促すだけでは不充分です。

お客さまが「このブランドとこれからも付き合いたい」と思えるような関係性を築くこと。 そのためには、次の5つのポイントが重要です:

  • ブランドに合ったチャネル選定と活用
  • 読み応えのあるコンテンツ設計
  • 通知のリズムと距離感の工夫
  • 顧客の声を活かす双方向の仕組み
  • ファンが居続けられる“場”の構築

まずは、できることから一つずつ。 無理なく始めることで、自然と“ずっと付き合える関係”が育っていくはずです。

次回はクローズドSNSについてお伝えする予定です。

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